過敏性腸症候群

診断フローチャート

警告症状・徴候発熱、関節痛、血便、6 ヵ月以内の 3kg 以上の体重減少、器質的疾患を示唆する症状と徴候。
危険因子50 歳以上での発症、大腸器質的疾患の既往歴、患者が消化管精密検査を希望する場合。
通常臨床検査血液生化学検査、末梢血球数、炎症反応、TSH、尿一般検査、便潜血検査、腹部単純 X 線写真。 便潜血陽性、貧血、低蛋白血症、炎症反応陽性があれば大腸内視鏡検査を行う。
大腸検査個別の症状・徴候・検査値に応じて、大腸粘膜生検、上部消化管内視鏡検査、腹部超音波、便虫卵検査、便細菌検査、腹部 CT、 小腸内視鏡(カプセル内視鏡、バルーン内視鏡)、小腸造影、腹部 MRI、乳糖負荷試験などが鑑別診断のために必要になることがある。 また、便秘が重症の場合には、colonic inertia や直腸肛門障害との鑑別も必要である。
Rome Ⅲ
Bristol 便形状尺度
1 - 2便秘
3 - 5正常
6 - 7下痢

IBS の型分類

便秘型 IBS(IBS-C)Bristol 1 - 2 が便形状の 25%以上でかつ Bristol 6 - 7 が便形状の 25%未満。
下痢型 IBS(IBS-D)Bristol 6 - 7 が便形状の 25%以上でかつ Bristol 1 - 2 が便形状の 25%未満。
混合型 IBS(IBS-M)Bristol 1 - 2 が便形状の 25%以上でかつ Bristol 6 - 7 が便形状の 25%以上。
分類不能型 IBS(IBS-U)上のいずれでもない。

IBS の治療フローチャート : 第 1 段階

分類商品名用量備考
5-HT3 拮抗薬イリボー男性:5 - 10、女性:2.5 - 5 μg副作用として虚血性腸炎がある。(特に女性)
粘膜上皮機能変容薬アミティーザ1 回 24 μg、1 日 2 回
リンゼス1 回 0.5mg、1 日 1 回、食前
プロバイオティクスビオフェルミンR3 T 分 3
ラックビー3 - 6 T 分 3
ミヤBM3 - 6 T 分 3
高分子重合体ポリフル3 T 分 3
止痢薬ロペミン1 - 2 cap 分 1 - 2オピオイド受容体を刺激することによって蠕動を抑制
タンナルビン3 - 4g 分 3 - 4粘膜保護や抗炎症作用などにより止瀉作用をあらわす
胆汁酸吸着薬コレバイン6 T 分 2
抗コリン薬トランコロン6 T 分 3アセチルコリンの作用を抑えることで蠕動抑制
下剤マグミット3 - 6 T 分 3膨張性下剤:便を膨張させ、かさを増す
ラキソベロン プルゼニド アローゼン適宜刺激性下剤:腸の神経を刺激して、腸の蠕動を高める

post infectious IBS

感染性腸炎後の IBS 発症率は約 6 〜 7 倍増加し、IBS 全体に占める PI-IBS の割合は 5 〜 25 %と推定される。

一部のIBS患者では、腸管粘膜の軽微な炎症や局所あるいは全身の免疫異常が認められることが報告されており、その傾向はPI-IBSで顕著である。
具体的には、末梢血では活性化T細胞や腸管志向性の強いある種のリンパ球が増加し、粘膜固有層内には肥満細胞やマクロファージの浸潤が目立つこと、 EC細胞の過形成と共に粘膜内のセロトニンや神経ペプチドの含有量が増加していることも報告されている。

感染が収まった後において IBS を発症し長期間継続する理由は、感染によって特異的 T 細胞が増加して長期間生存するため、 以降の刺激によって即座に活性化するためとも考えられている。

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